水位
ニュースを見ていると、いろいろな言葉が出てきて、混乱してしまいますが、川の水位は、
はん乱注意水位<避難判断水位<はん乱危険水位 (<越水)
ソース:川の防災情報(国土交通省)
今回の大雨で、上のサイト、自治体のHPやライブカメラ、Yahoo、TVなどを見ていて気付いたのは、
やっぱり情報が早いのは、水位のモニターやライブカメラなど、1次情報だということでした。
油を絞るのは罪?
冥界で罪人が脂を絞られていたけれども、お坊さんが法華経を唱えると、脂絞りの責め苦を許してもらえたというお話が、7世紀の中国の説話にあります。
その背景には、法華経の「油を圧(お)す殃(つみ)」(漢訳)という一節が、絡んでいるようなのですが…
なぜ、油を絞るのが罪になるのか、日本で出ている法華経の本を参照すると、不思議なことに、本によって理由が違っています。
理由は、2種類に大別されます。
もしかすると、お経は、サンスクリット語⇒中国語⇒日本語 と、訳されてきているので、その間に複数の解釈が生じたのかも…?と、思いました。
そこで、サンスクリット語の法華経を、直接、日本語の現代語に訳したものを探してみました。
- 作者: 植木雅俊
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/03/11
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説法者を凌駕しようとするところの人[、その人]は、胡麻の油を絞る者に属するところの道、そして胡麻を打ち砕く者に属するところの道、その道を突き進むでありましょう。(P.413,415)
上記の解釈について、訳注に次のように書かれていました。
「胡麻の油を絞る」ことと、「胡麻を打ち砕く」ことが罪とされる理由は、よく分からないが、渡辺照宏氏は、胡麻についている虫類を一緒に殺してしまう殺生罪になるからだという(P.419)
原典に理由が明示されていないので、今となっては何ともいえず、本当のところは分からないようです。
上記の中国の説話や、日本の「あぶらとり」の昔話では、主客転倒して、<罪人は脂を絞られる>とされたのは、お国柄でしょうか。興味深いことです。
※因みに、仏教の不殺生は、植物には適用されないそうです。
仏教、本当の教え - インド、中国、日本の理解と誤解 (中公新書)
- 作者: 植木雅俊
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/10/22
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あぶらとり(3)
インターネットを検索していて見つけた文献(http://dx.doi.org/10.7592/FEJF2016.64.khan)に、インド北部のウッタル・プラデーシュ州から集められたという、面白いお話の要約版が掲載されていました。内容は、大体こんな感じみたいです↓。
ある商人の息子が、毎日殴らせてくれる女性となら、結婚すると公言していた。
結婚式が終わると、彼の妻は「お金を稼いで来てくれたら殴ってもいいですよ」と言った。
男は行商に出掛けたが、旅の途中で人に騙され、商品を全て失った。
男は農場に住み込んで、1日中ゴマ油を絞る仕事に就いた。
そんな状況にもかかわらず、男は「自分の運命を喜んでいます。たくさん稼ぎました」と書いた手紙を父親に送った。
手紙を読んだ父親は大層満足したが、男の妻は嘘を見抜いて、尽力の末、男を帰宅させた。
(訳が間違っていたらごめんなさい…ヾ(;´▽`)
無茶な要求をした男が脂を絞られるのではなく、自分でゴマ油を絞るのが、面白いと思いました。
あぶらとり(2)
中国で7世紀頃成立したとされる「冥報記」に、ある人が、死後、冥界で脂を絞られるけれど、残された家族がお坊さんを呼んで、お坊さんがお経を唱えるとその責め苦が止んだというお話があり(「北齊梁伝」)、日本の「今昔物語集」にも和訳が掲載されています。
- 作者: 池上洵一
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なぜお経(法華経)を唱えると、脂絞りの責め苦を許してもらえるのでしょう?
法華経のなかで、油を絞ることは、父母を殺すことや、他人を騙すことと、同列の<罪、良くないこと>とされているそうです。
その理由の1つは、油を絞ると、ゴマにわいた虫(ゴマ油を食べて太った虫)も殺してしまい、結果的に沢山の生き物を殺めてしまうためです。
参考:アメリカBuddhist Text Translation Society による法華経及びその解釈の英訳(サンフランシスコ州立大学HP内)
(Chapter Twenty-six: "Dharani")
食べ物にわく虫は、人間にとって、厄介なものです。
でも、ゴマ油にわいた虫でも、油を絞って殺すのは罪であるという考え方が、このお経には込められているので、脂を搾られている罪人を助けられるのだと思います。
ただ、ひとつ気になることがあります。
ゴマにわいた虫を、人に当てはめて、「油/脂を絞る」=「懲らしめる」とする考え方は、最初からあったのでしょうか?
それとも、法華経が広まっていく中で、付け足された考え方なのでしょうか。
なんとなく、後者のような気がするのですが…。
あぶらとり(1)
ラジオ「昔話へのご招待」で、私にとって忘れられないお話のひとつに「あぶらとり」があります。
ちょっとこわい、その内容もさることながら、「外国からきたお話かもしれない」という小澤先生のコメントが、印象的でした。私も聞いていて、他の昔話と少し雰囲気が違っていて、何だか海外ドラマみたいだなぁ…と、思ったからです。
ふと思い出して、こちらのカタログを見てみました。
- 作者: ハンス=イェルク・ウター,小澤俊夫,加藤耕義
- 出版社/メーカー: 小澤昔ばなし研究所
- 発売日: 2016/08/01
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類話は、ヨーロッパ、中央アジア、中東、インド、中国、アフリカと、広範に分布しています。
(ただ、話型956に分類されるお話であっても、脂を搾られる場面が入っていないものも沢山あるようです。)
ついでに、「あぶらとり」でインターネットを検索してみたら、日本の「今昔物語集」の中に、似たお話が2つ収録されていて、うち1つは中国の7世紀の文献を和訳したものということでした。
ずいぶん古いお話だったのですね。何となく新しいお話かと思っていたので、意外でした。
「昔話の考古学 山姥と縄文の女神」
- 作者: 吉田敦彦
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1992/04
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本書でも同じように、両者の類似点を検証して、さらに、大昔の日本でハイヌウェレ信仰が具象化されたものが、縄文時代の土偶であると述べています。
女性が子供を産むことと、作物がよく実ることとの間に、大昔の人々が、呪術的な関連性を見出して、そんな信仰が生まれたのでしょうか。
土偶は、縄文時代の中期(約5,500 - 4,500年前)から、日本の関東地方、東北地方、中部地方を中心にたくさん作られたそうです。
縄文時代から、栗などの栽培が行われていたことは、時々話題になりますが、土偶も、その証拠なのでしょうか。
土偶の出土が多い地域と、少ない地域で、人々の生活様式は異なっていたのでしょうか?
ところで、日本の、古事記や日本書紀には、ハイヌウェレによく似た「オオゲツヒメ」(古事記)と「ウケモチ」(日本書紀)が登場します。
オオゲツヒメやウケモチは、五穀(稲を含む)と養蚕の神=弥生の女神?と、いう印象がありましたが、実は、もっと古い神様だったかもしれないのですね。
そういえば、日本の山姥同様、女神の零落した姿であるという、ヨーロッパの「ホレおばさん」は、どんなルーツをもつ神様なのでしょうか?
「若い女はベッドの下に強盗がいるのを見つけたとき、どのように身を守ったか」
学生の頃に、友達の友達の先輩の話だけど…みたいな感じで、
<一人暮らしの女性の部屋のベッドの下に斧を持った男が隠れていた>という話をきいたことがあります。
初めて聞いた時は怖い!!と思いました。
その後TVで都市伝説と分かって二度ビックリしましたが、妙にリアルな感じがして、全くの嘘とは思えませんでした。
ところが、ラジオ「昔話へのご招待」で紹介されていた話型カタログ
- 作者: ハンス=イェルク・ウター,小澤俊夫,加藤耕義
- 出版社/メーカー: 小澤昔ばなし研究所
- 発売日: 2016/08/01
- メディア: 単行本
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と集約される内容の昔話が、ヨーロッパ、中東、インド、アメリカ(スペイン系)、アフリカに分布しているそうです。
上の都市伝説?は、実は、何百年も前から知られていた、昔話の一種だったのかもしれません…。
元来伝播力があるので、日本で<一人暮らしの若い女性>&<部屋にベッドがある>という状況が一般化したのと同時に、広く流行したのかも…と、思います。
ところで、このカタログ(通称ATUカタログ)は、数年前、同ラジオの「夢の蜂」の回で聞いて以来、是非、自分の目で見てみたいと思っていました♪
普段の生活では気づきにくいことですが、昔話は、国や民族に関係なく世界じゅうに分布しているものが多く、「羽衣」「猿蟹合戦」のように、日本オリジナルと思えるような昔話でも、実は、世界中に類話があるのだそうです。
本書ではそんな類話を一つずつまとめて、番号をつけて、世界のどこに分布しているか記載しています。
たとえば、因幡の白兎がワニの背中を渡る話は、話型58としてまとめられていて、類話がアジア、アフリカ、チリ、アメリカ(アフリカ系)に分布しています。
地理的な広さも、時間的な奥行きも、縮めてしまう昔話って、本当に凄いなぁと思いました…。