陽だまり日記

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陽だまり日記

大好きな本や映画のことなど

「ラファエル・ナダル自伝」

ラファエル・ナダル 自伝

ラファエル・ナダル 自伝

生き生きとした迫力が伝わってきて、映画を見るように最後まで一気に読めました。

"Raging Bull"(猛牛)の異名をもつ、スペイン出身のラファエル・ナダル選手は、もっとも強かった頃の "生ける伝説" ロジャー・フェデラー選手を追い詰め、ついに負かして世界ランク1位の座を奪ったことでよく知られています。フェデラー選手が得意とする芝のコートで、フルセットの末、勝利した2008年のウィンブルドン大会は忘れられません。

本書は、ナダル選手の文章の間に、ジョン・カーリン氏のコラムが挟まっている構成です。ナダル選手が、幼い頃からどのような訓練を積んできたのか、試合中は何を考えているのか、本人の書いたものを読むことができます。そこに、ベテランのスポーツジャーナリスト、カーリン氏の取材による解説が付けられているので、外からはどう見えたのか、家族や関係者がどう感じていたのかまで、よく分かります。たとえば、こんなふうに。

まもなくコートに入る時間だ。アドレナリンがほとばしり、身体にこみ上げてきて、神経系統に染み渡る。息が上がり、エネルギーがみなぎる。(略)
僕は立ち上がって激しく動き始めた。(略)ロジャーが見ていたかどうかは分からない。試合前、彼はロッカールームで僕みたいにバタバタしない。僕はジャンプを繰り返し、6メートル足らずの狭いスペースを端から端までダッシュした。
(p.20)

ナダルはマイモにテーピングをしてもらってマッサージ台から起き上がった瞬間に、ライバルにとって脅威的な存在となる」と、元プロ・テニスプレーヤーでもあるロッチは言う。「バンダナを巻く単純な動作でさえも恐ろしいほど集中し、遠くを見つめる彼には周りのものは何も目に入らない。そして突然、深呼吸し、力強く屈伸し始め、ライバルが部屋の中のほんの少し離れたところにいるのに気づいていないかのように、『バモスバモス!(行くぞ!行くぞ!)』と叫ぶのだ。」
(p.28)

本書によると、ナダル選手の鬼気迫る闘志は、人並み以上に繊細で神経質な彼が、試合だけでなく日常生活でも抱えている不安感や、内なる恐怖の裏返しなのだそうです。このような性質をコントロールするのは、誰にでもできることではありません。だからこそ、達成されたときには凄まじい爆発力をもつのだと思いました。
そして、テニスのトップ・プレーヤーのなかでも彼のようなメンタルをもつ選手は稀だといいます。フェデラー選手とは異なるタイプですが、ナダル選手もまた、天に選ばれたプレーヤーなのだという思いを新たにしました。

もうひとつ、スポーツ選手には周囲の支えが不可欠であることを、本書は教えてくれます。とくに強調されていたのが、選手の業績でなく彼/彼女自身をいつも大事に思う人々の大切さです。トップ選手に対して、その業績を度外視して接するのは簡単なことではないと思いますが、ナダル選手の故郷、マヨルカ島のマナコルでは、地域全体にそういう風土、文化があって、彼の大きな支えになっているそうです。皆が家族のような感じなのかもしれません。