「狂人日記」、「阿Q正伝」
- 作者: 魯迅,竹内好
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1981/02
- メディア: 文庫
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魯迅「阿Q正伝」(青空文庫)
魯迅「「吶喊」原序」(青空文庫)
「狂人日記」は、ある男が、家族に食べられる…という妄想を抱く話です。驚いたことに、本作が作者のデビュー作なのだそうです。
サリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」や、芥川龍之介の「河童」「歯車」を思い出すような内容でした。
「阿Q正伝」は、映画「男はつらいよ」の寅さんみたいな主人公阿Qが、無実の罪で処刑されてしまうまでのお話です。(小Dという、源公みたいなキャラクターも出てきます。)
本作の、言葉を失うような悲惨なラストは、事実にインスパイアされているそうです。
「吶喊」原序には「阿Q正伝」を書くきっかけとなった出来事が詳しく述べられています。
また、上の序文には作者が文学を志して知った『寂寞』についても、大変印象的な文章があります。この思いが、「狂人日記」につながったのかも…と、思いました。
凡て一人の主張は、賛成を得れば前進を促し、反対を得れば奮闘を促す、ところが爰に生人の中に叫んで生人の反響なく、賛成もなければ反対もないと極ってみれば、身を無際限の荒原に置くが如く手出しのしようがない。これこそどのような悲哀であろうか、わたしがそこに感じたのは寂寞である。(井上紅梅訳)