陽だまり日記

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陽だまり日記

大好きな本や映画のことなど

「レイルウェイ 運命の旅路」(2013、オーストラリア/イギリス)

映画

現在と過去を行ったり来たりしながら、記憶の奥へ潜行していくような映画の構成や全体的な雰囲気が、とても良かったです。

本作は、1942年のシンガポール陥落の後、日本軍に捕らわれてビルマとタイを結ぶ鉄道の敷設に従事させられていた元・英国軍兵士が、帰還後、当時の経験がもとで発症したPTSDを克服しようとする物語です。実話に基づいていますが、脚色も大分あるようです。

映画では、日本軍の通訳・永瀬氏が、その時々で自分に有利なように言動をコロコロ変えながら、主語を常に『we』として個人の責任を回避する、とんでもない卑怯者のように描かれています。それに対して、主人公のローマクス氏は勇気があって、拷問されても決して屈しない信念の人で、永瀬氏と再会すると彼の欺瞞を鋭く見破り、追及します。こんな2人が、映画の紹介に書かれていたように、気持ちを通じ合うのは難しそうだと思いました。
ところが、ラストで和解しただけでなく、親友にまでなったとナレーションが入って終わります。これは、随分複雑だと感じました。ローマクス氏は自分の過去から解放される必要があり、永瀬氏はローマクス氏に許してもらいたかったでしょうから、和解するところまでは納得できましたが、ローマクス氏は永瀬氏を軽蔑しているような印象だったので、友達になるというのは、ミステリアスでした。
それで、他の方のレビューをいくつか見てみたところ、どうやら、永瀬氏の人物像は映画化にあたってかなり脚色されていたようでした。映画では分かりやすくするために、(ナチス・ドイツのアイヒマンのような、)全体主義の末端を担う典型的なキャラクターにされてしまっただけで、実際は、もっと人間らしい人だったので、友情が生まれたのでしょう。原作を読んでみたくなりました。

作中で鉄道敷設の歴史が総括されていました。非常に苛酷な労働で、各地で移民や戦争捕虜が従事させられたそうです。ヘニング・マンケルの小説「北京から来た男」でもこのテーマが取り上げられていたのを思い出しました。