陽だまり日記

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陽だまり日記

大好きな本や映画のことなど

「或る風潮について」

岸田國士「或る風潮について」(青空文庫)

日本人が日本人に向つて日本のことを褒めて話すといふ風潮が近頃目立つやうであるが、これは現在の日本に於いてはたしかにその必要があるからだと思ふけれども、そこにちよつと微妙な呼吸があつて、それほど変でないものと、妙にくすぐつたい、もうやめてくれと云ひたくなるやうなものとがある。
(略)
殊にいま日本は重大な乗るか反るかといふやうな国家的難関に遭遇してをり、これを乗り切るための国民の覚悟と努力が要求されてゐる矢先であつてみれば、お互に、しつかりしろ、お前は日本人だ、こゝでお前の真の力を発揮しなければならんぞ、と必死になつて励まし合ふといふところにまで来てゐるのかも知れぬ。

1939年2月に発表された文章からの引用です。今と似ているのが、何とも不思議です。
当時は、1937年7月に盧溝橋事件があり、それ以降、戦闘状態が続いていました。見通しの立たない深刻な事件の渦中というところは、現代と似ているかもしれません。
因みに翌年(1940年)、東京オリンピックが予定されていました。