「海辺のカフカ」
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/02/28
- メディア: 文庫
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メタファー、メタフォリカルという言葉が何度も出てきて、分かったような分からないような風変りなストーリーなのに、いつの間にか惹き込まれてしまうのが不思議です。
小説のあちこちに、90年代後半以降連続した、少年による凶悪事件を思い出させるディテールが散見されます。本作が書かれた当時、深刻な社会問題になっていました(wikipedia-キレる17歳)。
作中にも『また15歳か』という台詞がありましたが、あの頃、まさにこういう雰囲気で、大人達は10代の少年少女達に、「なぜ殺してはいけないのか」と問われて右往左往していたのです。私は当時、山折哲雄さんの本に、(あやふやな記憶ですが、)人間は放っておいたら殺してしまうからこそ、殺したらいけないんだ。のような感じで書かれてあるのを読んで、成程と思った覚えがあります。(この話題がもう昔話のようになっていることに驚いてしまいます。)
現代の少年達が、古来メタファーだった罪をリアルに持ち込んでしまうような心的危機を迎える原因を、本作では、2つ挙げています。愛されている実感のなさと、すぐ身近に迫っている暴力の気配です。作者は、少年達の背景にさまざまな悲劇性を感じ取っていたようです。
ところで、魚が降ってくるエピソードは、確か日本で最近そんなことがあったと思い、調べてみたら、2009年のことでした(wikipedia-オタマジャクシ騒動)。
ちなみに、空からおかしなものが降ってくるのは、オカルトの世界では、ファフロツキーズ現象と名付けられていて、よく知られているようです(wikipedia-ファフロツキーズ現象)。これには、びっくりしました。世の中、いろんなことがあるものですね。
(先日、「スターバト・マーテル」というイタリアの小説を読みましたが、主人公チェチリアの話し相手は、本作の『カラスと呼ばれる少年』とよく似ています。「海辺のカフカ」に、インスパイアされたのかもしれません。「スターバト・マーテル」は以前このブログで簡単に紹介しました。)