陽だまり日記

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陽だまり日記

大好きな本や映画のことなど

「天才画家ダリ 愛と激情の青春」(2008、イギリス/スペイン)

映画

天才画家ダリ 愛と激情の青春 [DVD]

天才画家ダリ 愛と激情の青春 [DVD]

天才画家ダリ 愛と激情の青春」(原題:Little Ashes)は、画家のサルバドール・ダリと、詩人で劇作家のフェデリコ・ガルシア・ロルカの、男性同士の恋愛が直截的に描かれていて、初めて見たときは目が( Д ) ゜゜ポーンでした。でも、ロルカ役の俳優さん(ハビエル・ベルトラン)の演技が好きになって、もう3回くらい観ています。
何度も観てしまったもう1つの理由は、2人が別れる原因が、はっきり分からないことです。Wikipediaで粗筋を読むと、「ダリが望む以上の関係をロルカが求めたので…」のように書かれていますが、映画を観ていると、2人の距離を慎重に推し量っているようなロルカを挑発するのはむしろダリの方です。
ところが2人が盛り上がると、女性の声らしい幻聴が聞こえてきてダリの邪魔をし、最終的には、その問題に踏み込まれたことが(下の台詞)、ダリがロルカの元を去るキッカケになっています。

Federico: Salvador, what do you see when..., you can tell me, you can tell me anything.

問題の幻聴は、粗筋どおりなら、同性愛に対する躊躇いや嫌悪感が形になったものと思うのですが、いくら繊細でもやや反応が大袈裟(一度は気絶してしまいます)な気がするし、ロルカ役のハビエル・ベルトランさんの演技が、情熱的ではあっても一方的に押しつける感じには見えないので、余計にシックリ来ません。
嫌悪感でないとすれば、過去の記憶がもとになった幻聴かもしれず、上に引用したロルカの台詞 "what do you see" にもその方が合っているような気がします。実際、ダリという人はトラウマのデパートみたいなタイプだったようですし…。だとすれば、ここは2人の運命を左右する重要なところなので、もう少し詳しく描かれていたら良かったな…と思いました。


本作の脚本家Philippa Goslett氏の解説によると、ダリは2人が深い関係にあったことを後年否定しているけれど、当時交わされた書簡を読むと何かがあったのは明らかで、ただ繊細な(多くの不安を抱えている)ダリにとってそれを継続していくのは負担だった、としています。また、その代償としてロルカはダリの見ている前で女性と関係をもつようになり、その経験がダリの倒錯の原因にもなった、さらに2人の関係性がもたらした悲劇を負ったのはダリの方で、彼は一生ロルカの影に付きまとわれたと言っています。
脚本家としては、2人の決別はダリの精神的な問題が大きかったという解釈だったようです。