石の上を歩くこと
カトリーヌ・パンコールの大ヒット3部作の2作目「カメのスローワルツ」は、一作目同様、怒濤の展開で楽しく読めました。でも、主人公ジョーの姉、イリスがメンタルのバランスを崩してアブノーマルな恋愛にハマってしまう展開は少々ショッキングでした。
この手の恋愛は、訳者解説によれば、(マルキ・ド・サド以来の?)フランス文学の伝統だそうです。
ラストの救いのなさにやや呆然としながら、ふと以前読んだパウロ・コエーリョの「11分間」を思い出しました。
『苦痛と屈辱とものすごい快楽』を経験した主人公のマリーアを、恋人のラルフが諭す場面があります。
「君は僕が以前に経験したのと同じように、苦痛が快楽と結びつくのを経験したらしい。それを今ここで、魂から引き抜いて、捨てる必要があるんだ」(文庫版 p.265-266)
ラルフはこう言って、寒さの中、マリーアを裸足にして石の上を歩かせます。それはかつて彼自身が日本の熊野の修験者に教わった方法だと言って…。
このエピソードは、正直、分からないところも沢山ありますが、なぜか熊野の修験者が出てくるところがとても印象的ですし、暗闇の迷路のような"伝統"より明るい気持ちになれて、いいなと思います。
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