「ハーメルンの笛吹き男」
- 作者: 阿部謹也
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1988/12/01
- メディア: 文庫
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事件が起きたとされる中世ドイツの社会状況を丹念に調べ、歴史家がどう解釈してきたか紹介しています。情報量が多くて、難しいところがたくさんあったので、折に触れて何度でも読んでみたいと思っています。
一番驚いたのは、上の伝説に類話があるという事実です。本文中に、欧州の近隣諸国に伝わる8つの類話が紹介されています。
話は飛びますが、私の郷里には、鬼の伝説が伝わっています。これに類話があるなんて考えたこともなかったのですが、ふと調べてみたら見つかりました。鬼でなく、竜の伝説として日本中に広く分布しているようでした。
(さらに脱線しますが、数ある類話のなかで、郷里の伝説と類似点の多いものが、郷里から遠く離れたA地方に見つかりました。よく調べてみると、郷里とA地方とは、当時さまざまな関わりをもち、盛んに人が往来していたようでした。つまり、郷里の鬼伝説ができるのに、A地方由来の勢力が関わった可能性があると思います。そうだとすれば、そんな人工的なエピソードがなぜできたのか、ちょっとミステリアスです。)
こうした伝説に、もとになる歴史的な事実があったとすれば、それは忘れられ、事実に取って代わった伝説が痕跡になって生き残ってきたということになります。人々の記憶というのは不思議だなぁ…と、つくづく思いました。