陽だまり日記

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陽だまり日記

大好きな本や映画のことなど

「この世界の片隅に」

映画

こうの史代さんの「この世界の片隅に」が映画化されたなんて。

大好きな作品でストーリーは全部知っているのに、映画のトレイラーを見たらジーンとしてしまって、久しぶりに映画館に足を運びたくなりました。


映画『この世界の片隅に』予告編

近年、いろいろな法律が変わって、日本が戦争に近付いていると言われることがあります。以前と比べて現実味を帯びてきたからか、正直、戦争の惨禍については、もう見たくも聞きたくもない…と思ってしまうこともあります。

この映画もはじめは観ないでおこうかな…と思ったのですが、予告編を見たら声も曲もぴったりだし、原作の優しいタッチがしっかり再現されていて、そのなかでキャラクター達が動いているのが嬉しくなってしまって、そんな気持ちはすっ飛んでしまいました。

予告編のなかで、主人公のすずちゃんと、彼女の義理の姪の晴美さんが、春爛漫の野原から、B29と高射砲の撃ち合いを望む場面があります。ここには、作者の世界観が端的に表れているように思います。ただ悲しいだけのことも、ただ嬉しいだけのことも、この世界にはなくて、いつでも両方が一緒にあるというような。登場するキャラクター達も同じように、良いだけの人も、悪いだけの人もいなくて、誰もが多かれ少なかれ、両方の面をもつように描かれています。

 

1人1人が多面性をもつ人々が集まって、ささやかな楽しみを共有しながら温かく暮らしていくためには、日常生活のこまごまとしたことを工夫して、日々を丁寧に送ること…という生活の知恵は、こうの史代さんの作品で一貫して描かれる世界観です。本作のキャラクター達も、そんなふうにして何とか銃後の生活を乗り切ります…。

 

戦時下の生活を扱った映画で、成瀬巳喜男監督の「愉しき哉人生(1944)」は、敗戦 "直前" に撮られた作品ですが、本作と同じような内容を扱っていると思います。

 

どちらの作品も、辛い時期を何とかやり過ごす力や、自分の人生を大切にしようという気持ちを再確認させてくれます…。