陽だまり日記

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大好きな本や映画のことなど

蘇民将来

坂口安吾「安吾の新日本地理 01 安吾 伊勢神宮にゆく」(青空文庫)

伊勢は、天孫一族の氏神伊勢神宮がある土地にもかかわらず、天孫以前の信仰と思われる「蘇民将来子孫」の札を戸口にかけている家が多いそうです。

Wikipediaによれば、蘇民将来の信仰は伊勢だけでなく日本中にあるようですが、その正体は謎に包まれていて、起源は朝鮮、インド、中央アジアなど様々な説があります。

一説によれば、ユダヤ教の「過越祭」とも共通点があると知り、初めは(まさか…)と思いましたが、確かに、似ているところがあります。

それは、蘇民将来の娘が武塔神に教えられた "しるし"(茅の輪) を身につけて、天罰を免れるところ。武塔神は恐ろしい神様で、茅の輪を身につけていなかった人間は、蘇民将来を含めて皆殺しにしてしまうのです…。でも、だからこそ、茅の輪や、それと同じ効果をもつ「蘇民将来子孫」の札の有難さが増すのだと思います。

ユダヤ教の過越祭は、出エジプトの折、ユダヤ人が戸口に "しるし" をつけておくことで神による災厄を免れたという、旧約聖書の出来事が元になっているそうです。この災厄は、人間から家畜にいたるまでエジプトの「すべての初子を撃つ」という(Wikipedia)、やはり非常に恐ろしいものです。

日本人と、ユダヤ人の暮らしていた土地は、距離的には離れているのに、似たお話が伝わっているのは、面白いです。旧約聖書の成立年代は紀元前4~5世紀とのことですが、大変古い時代に、こんな苛烈な神様が中東にいて、同時期に?その少し後に?日本にも流れついたのでしょうか。

また、日本とユダヤの文化や信仰に共通点があることは、ときどき指摘されていて、今までは、(いくらなんでも…)と思っていたのですが、もしかすると、他の民族が忘れてしまった非常に古い信仰を今でもなくさずに持っているところが、共通しているのかも…と、思いました。