あぶらとり(2)
中国で7世紀頃成立したとされる「冥報記」に、ある人が、死後、冥界で脂を絞られるけれど、残された家族がお坊さんを呼んで、お坊さんがお経を唱えるとその責め苦が止んだというお話があり(「北齊梁伝」)、日本の「今昔物語集」にも和訳が掲載されています。
- 作者: 池上洵一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1980/01
- メディア: 新書
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なぜお経(法華経)を唱えると、脂絞りの責め苦を許してもらえるのでしょう?
法華経のなかで、油を絞ることは、父母を殺すことや、他人を騙すことと、同列の<罪、良くないこと>とされているそうです。
その理由の1つは、油を絞ると、ゴマにわいた虫(ゴマ油を食べて太った虫)も殺してしまい、結果的に沢山の生き物を殺めてしまうためです。
参考:アメリカBuddhist Text Translation Society による法華経及びその解釈の英訳(サンフランシスコ州立大学HP内)
(Chapter Twenty-six: "Dharani")
食べ物にわく虫は、人間にとって、厄介なものです。
でも、ゴマ油にわいた虫でも、油を絞って殺すのは罪であるという考え方が、このお経には込められているので、脂を搾られている罪人を助けられるのだと思います。
ただ、ひとつ気になることがあります。
ゴマにわいた虫を、人に当てはめて、「油/脂を絞る」=「懲らしめる」とする考え方は、最初からあったのでしょうか?
それとも、法華経が広まっていく中で、付け足された考え方なのでしょうか。
なんとなく、後者のような気がするのですが…。