陽だまり日記

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大好きな本や映画のことなど

「あなたを抱きしめる日まで」(2013、イギリス)

あなたを抱きしめる日まで [DVD]

あなたを抱きしめる日まで [DVD]

若くして未婚の母になってしまったアイルランド女性フィロミーナが、出産後すぐ養子に出されてしまった息子の行方を探しに行く物語です。ノンフィクションです。謎解き物としても、惹き込まれました。
アイルランドは厳しいカトリックの国で、つい最近まで、未婚の母は修道院に入れられて厳しい罰を与えられていたそうです。フィロミーナも、彼女の息子も、修道院に翻弄されます。
それでも信仰を失わず自分の生き方を貫くフィロミーナの姿がとても印象的でした。私は、どちらかというと、この映画に出てくるジャーナリスト・マーティンのような考え方に陥りがちで、フィロミーナのような人々に取り囲まれるとどうしていいのか分からなくなってしまうのですが、2人の対比を客観的に見ることができて、少し霧が晴れたような気がしました。

あなたを抱きしめる日まで (集英社文庫)

あなたを抱きしめる日まで (集英社文庫)

原作本もあって、こちらは映画と違い息子が主人公になっています。
幼い頃事情も分からないまま母親と引き離された主人公の孤独と苦悩がよく伝わる一冊でした。彼は自分が悪い息子だったので捨てられたと思いこみ、その歪んだ自己像に合わせるように自らを追い込んでしまい、それがもとで大病を患って亡くなってしまいます。生涯2度アイルランドに渡って母親を探しますが修道院に阻まれます。もしお母さん(フィロミーナ)に会えていたら別の人生もあったかもしれないのに…、何とも言いようのない悲しいお話でした。