陽だまり日記

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片目伝説(1)

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片目伝説は日本全国にあり、片目の "魚" が出てくるものと、片目の "神さま" が登場するものに大別されます。柳田国男日本の伝説(青空文庫)」にも沢山収録されています。

片目の魚の伝説は、ある池・沼などに住む魚がおかしなことに皆片目だといい、それにまつわるさまざまな因縁が語られます。

一方、片目の神さまの伝説は、神さまがある地方へ出かけた折、ある特定の(ウド、胡麻、竹など)植物で目を傷めたので、それからその地方にはその植物が生えなくなったという、何とも不思議なお話です。

私の郷里にも、片目の神さまのお話が伝わっているので、ちょっと興味があります♪

さて、日本の片目伝説の起源は、複数の説があるようです(wikipedia-隻眼)。
中でも谷川健一氏の「青銅の神の足跡」他で指摘された、"片目伝説は古代の金属精錬に関係している" という説は、もっともよく知られていると思います。

青銅の神の足跡 (集英社文庫)

青銅の神の足跡 (集英社文庫)

同書では、その根拠として、次の2つを挙げています。

  • 鍛冶師は目を傷めやすく、「日本書紀」などに登場する天目一箇神(あめのまひとつのかみ)という隻眼の鍛冶の神様は、彼らの姿を反映している可能性がある。
  • 片目伝説のある地域の周辺に金属精錬の跡が残っていたり、銅鐸などの金属器が出土したりすることがある。

郷里の集落から、古代の遺跡や遺物は、(まだ?)見つかっていないようですが、今後出てきたら面白いと思いました。

(もちろん、ある地方で銅鐸がみつかったり古い伝説が残っていたりするのは、単に昔から開けていた地域だからで、両者に因果関係はない可能性もあるとは思いますが…。)


ところで、片目伝説は、はじめにも書いたように、片目の "神さま"、または、片目の "魚" が登場しますが、なぜ、神 or 魚なのでしょう。
古い信仰では、水神は金属を嫌うといいます。片目伝説と金属精錬が関連しているとすれば、片目の魚は、金気で傷ついた水神を表しているのでしょうか。
あるいは、片目の神さまの伝説に出てくる "植物" とも考えあわせると、もしかして…、鉱毒を表しているのでしょうか? 明治時代に足尾銅山の問題が起きた折には、魚が死んだり、作物が実らなかったりすることがあったようです。古代にも同じようなことがあったのでしょうか?(そうだとすれば、鉄よりも銅と強く結びついた伝説と言えるでしょうか。)


郷里の親類に、片目伝説のことを尋ねてみたところ、「あれは、後から(植物を)抜いたんだ」という意外な返事が返ってきたのは、面白かったです。なぜ抜いたのか、詳しくは聞けませんでしたが……単に地域起こしの一環かもしれませんし、そうでないとすれば、たとえば鍛冶師を新しく迎えたりする際など、鍛冶の神を村にお呼びしようとするとき、おまじない(鍛冶の神さまへの捧げもの?)として、なにがしかの植物を除去する習慣が、昔はあったのかも…なんて、想像を逞しくしてしまいました。