陽だまり日記

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大好きな本や映画のことなど

「平将門」

幸田露伴「平将門」(青空文庫)
平将門は、なんとなく、平安時代に、関東で大暴れした人…?と思っていましたが、幸田露伴氏の「平将門」を読むと、大分イメージが変わりました。

将門は早くに親をなくしたので、相続した財産を親族に狙われ、若い時から苦労していたようです。それで、一族と小競り合いを繰り返すうちに、地元や付近の国々で人望を集めて、遂に謀反の頭領に担ぎ上げられてしまったようです。将門が人を集めた背景には、彼と反目していた、地方の権力者に対する反感がまん延していたことがあったようです。また、それが謀反という大事になってしまったのは、将門に協力していた興世王や将門本人が、皇室の子孫であったことが影響したのかもしれません。

平将門(一派)は、人気、実力、血筋の3つを兼ね揃えていたので、より良い為政者として期待された一方、朝廷と土地の古い勢力にマークされて、徹底的にうち滅ぼされてしまったようです。彼に期待した人々、彼を疎ましいと思った人々、どちらも大勢いたので、今になってもその記憶が残っているのだと思いました。


ところで、将門と親族との確執について、印象に残った個所があったので本文中から引用します。

幼子のみ残つて、主人の亡くなつた家ほど難儀なものはない。(略)そこで一族の長として伯父の国香が世話をするか、次の伯父の良兼が将門等の家の事をきりもりしたことは自然の成行であつたらう。後に至つて将門が国香や良兼と仲好くないやうになつた原因は、蓋し此時の国香良兼等が伯父さん風を吹かせ過ぎたことや、将門等の幼少なのに乗じて私をしたことに本づくと想像しても余り間違ふまい。

私の身の回りでも、昔話としてこの類のエピソードをきいたことがあります。親の不幸に乗じて親戚一同が、土地や財産を自由にしようとするなんて、随分非情な話だなぁ…と、あまりの寒々しさに恐ろしくなりましたが…、私がナイーブだっただけで、ごくありふれたことだったのかもしれません。