油を絞るのは罪?
冥界で罪人が脂を絞られていたけれども、お坊さんが法華経を唱えると、脂絞りの責め苦を許してもらえたというお話が、7世紀の中国の説話にあります。
その背景には、法華経の「油を圧(お)す殃(つみ)」(漢訳)という一節が、絡んでいるようなのですが…
なぜ、油を絞るのが罪になるのか、日本で出ている法華経の本を参照すると、不思議なことに、本によって理由が違っています。
理由は、2種類に大別されます。
もしかすると、お経は、サンスクリット語⇒中国語⇒日本語 と、訳されてきているので、その間に複数の解釈が生じたのかも…?と、思いました。
そこで、サンスクリット語の法華経を、直接、日本語の現代語に訳したものを探してみました。
- 作者: 植木雅俊
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/03/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
説法者を凌駕しようとするところの人[、その人]は、胡麻の油を絞る者に属するところの道、そして胡麻を打ち砕く者に属するところの道、その道を突き進むでありましょう。(P.413,415)
上記の解釈について、訳注に次のように書かれていました。
「胡麻の油を絞る」ことと、「胡麻を打ち砕く」ことが罪とされる理由は、よく分からないが、渡辺照宏氏は、胡麻についている虫類を一緒に殺してしまう殺生罪になるからだという(P.419)
原典に理由が明示されていないので、今となっては何ともいえず、本当のところは分からないようです。
上記の中国の説話や、日本の「あぶらとり」の昔話では、主客転倒して、<罪人は脂を絞られる>とされたのは、お国柄でしょうか。興味深いことです。
※因みに、仏教の不殺生は、植物には適用されないそうです。
仏教、本当の教え - インド、中国、日本の理解と誤解 (中公新書)
- 作者: 植木雅俊
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/10/22
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (24件) を見る