陽だまり日記

陽だまり日記

大好きな本や映画のことなど

「日本の民俗宗教」

松尾恒一さんの「日本の民俗宗教」を読みました。

日本の民俗宗教 (ちくま新書)

日本の民俗宗教 (ちくま新書)

 

難しかったけど、今まで知らなかったことが分かって面白かったです。

例えば、旧正月立春の違い。ふわっと、だいたい同じ?と思っていたけれど、旧正月太陰暦立春太陽暦に基づいていて、必ずしも一致せず、年によって前後することもあったのだとか。

旧正月の前日が大晦日立春の前日が節分。年と季節の変わり目で、良いものと、悪いものが両方来る時期なので、邪悪なものを追い出すために、旧正月の大晦日には宮中で追儺という節分みたいな行事を行っていたそうです。大晦日・お正月と節分・立春は別物と思っていたけど、以前はもっと近いもので、どちらもすごく重要なイベントだったのかなと思いました。

そう思うと、中国では今でも春節が一大イベントというのが以前より腑に落ちます。

日本の昔話では、年の変わり目に火を絶やさないようにするとか、死体が小判に変わるというのがありますが、悪いものといいものが両方来ることと関係があるのかなと思いました。

それから気になったのは、中国では新年の最初の満月に丸い餅や団子を食べるのだとか。お月見みたいです。日本の鏡餅やお雑煮の丸餅にも、元はそういう意味があったのかどうか…。この本の中では日本のお正月は稲の祭りだと述べられていて、月の暦そのものとの関わりについては言及されていないようでしたが、いろいろなことが想像され興味深かったです。

本書の何に一番感動したかというと、一つ一つのお祭りや風習の由来について、明快な解説がついていること。

例えば祇園祭は…

1.平安時代初期、人口増加・インフラ不足が原因で町の衛生状態が悪化し、疫病が流行したのを、御霊(たたり神)のせいと考えるようになり、それを宥めるための「御霊会」を行うようになった。

2.御霊信仰とともに、疫鬼を退治する「牛頭天王」への信仰が広がり、牛頭天皇を祀る祇園社(八坂神社)による祇園御霊会(祇園祭)が行われるようになった。

 

「御霊」とか「牛頭天王」という言葉は、聞いたことはあっても、何か難しそう…と思っていました。でも、この説明は分かりやすかったです。

日本のお祭りで、御神輿をかついで海に入るのを私もテレビで見たことがありますが、それは上の1で行われた御霊会と同じ流れなのだそうです。海に入るのは御神輿に乗っている疫病神を海(異界)に流すという意味があるのだとか。

今まで謎だなぁ…と思っていたあれこれの、理由が分かって嬉しくなりました。