「俗化する宗教表象と明治時代 ~『牛人間』のはなし~」
「俗化する宗教表象と明治時代」の、「『牛人間』のはなし──仏教説話のなかの畜身変成譚と『件』伝承」という部分を読みました。
「日本霊異記」で読んだ、人が牛に変わってしまう仏教説話と、予言獣「件(くだん)」が関係しているのか知りたくて。
結論から言うと、その可能性は大いにあるみたい。
平安時代に書かれた「日本霊異記」の中では、強欲だったり、お寺から借りたものを返さなかった人が牛に変わってしまうのですが、その後、時代が下ると、怠け者とか親不孝者、道理に外れて兄と交わった妹なども牛になってしまうといった話が語られるようになっていったそうです。(ご飯を食べてすぐ寝ると牛になるよ!というのもこの部類でしょうか。)
ところが近世になると、人々はこういった教訓話にだんだん懐疑的になり、近代になると、強欲だから…とか、怠け者だから…といった因果関係が忘れられていき、それとともに、半牛半人の「件」の噂が広まるようになったのだとか。
つまり、「件」は、もともとは人々を戒める教訓として主に仏教者により語られてきた化牛説話が、日本人の仏教離れや近代化によって来歴不明の予言獣に変化したものかもしれない、ということかと思います。なるほど…。
「くだん」を初めて知ったのは子どもの頃でしたが、「件」をクダンと読んで、その字のとおりの形をしているという設定が何とも不気味に思えました。誰が考えたんでしょうね。