陽だまり日記

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大好きな本や映画のことなど

「ノルウェイの森」

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

先日読んだ「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」、「海辺のカフカ」と共通するところが沢山ありました。とくに、前者は本作の焼き直し?と思うくらいでした。後者は、ギリシア悲劇と、幼馴染のカップルの話が作中で重要な位置を占めている点が共通しています。

緑が語る、学生運動の雰囲気が、興味深かったです。何となく話にきいたことはありましたが、はじめて、具体的に想像できた気がします。それにしても、講義中に学生がやって来てそれを止めさせるなんて、今では考えられないことです。中国の革命みたいな感じになっていたのですね。そこに与しないのも、勇気がいることだっただろうし、熱心に取り組んだあとで挫折するのも、後々響く経験になったと思いました。

明るい話ではないのに、読んだ後、落ち込む感じがありません。むしろ、ぐっすり眠って元気になれそうです。

1つ、納得できないのは直子です。彼女が死を選んだ直接の原因が分かりにくかったです。
書かれていない部分を想像するとすれば、例えば、前彼のキズキ君が死んでしまったので、新しい彼のワタナベ君も死んでしまうんじゃないかと心配になりすぎて病気になってしまった…のでしょうか。そうだとすれば、ワタナベ君と一線をこえたことが発病の決定的な引き金になったのも分かるし、手紙をもらえばもらうほど、不安定になったのもうなずけます。でも、この解釈だと、身近で直子の気持ちを分かっていたはずのレイコさんが、ワタナベ君に新しい彼女ができたのを内緒にしたことに、別の意味が生まれてしまいます…ラストとは矛盾しませんが…、13歳の魔女が乗り移ったみたいで、怖いです。