陽だまり日記

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大好きな本や映画のことなど

タイBLドラマの感想 part.2

前回の、タイBLドラマの感想の続きです。

 

ドラマを見ていると、タイの食事も、白いご飯とおかずの組み合わせが多いように感じます。朝ご飯にはお粥がよく出てきます。

ラジオ「昔話へのご招待」タイの昔話の回を聞き直したら、小澤先生が次のようなことをおっしゃっていました。タイも田んぼの国だったんですね。

「100万の田の国」っていうのは、特定の言い方のようなんですね。田んぼの国でしょう。米作の、稲作の国ですよね。ですから、その田をたくさん支配しているっていうのは富を示すわけね。その「100万の田」っていう決まった言い方があるようなんですね。

(ラジオ「昔話へのご招待」2014.10.24より一部引用)

偶然にも、ぴったり6年前の放送回でした。

 

◇「I'm Tee, Me Too」(2020/9~放送中)(Wikipedia

来年1月からWOWOWで放送予定。全8話。Krist・Singto、Off・Gun、Tay・Newの豪華な共演。非BL

昨夜放送された第6話はSingto演じるMaiteeの回。お母さんが脳腫瘍で……って、もしかしなくても実話なのでは。気のせいか、Krist…じゃなくてWateeも、話を聞く前からちょっと泣いてるように見えました。

Krist・Singtoは、「SOTUS」でデビューしたタイBL界のレジェンドカップルなんですが、どうもいつも何かぎりぎりを攻めてくるというか、真実と虚構の境界線上に立ち続けている感があって。それが2人の"ケミストリー"なのかなと理解はできますが、少し劇薬的なところが気になってしまいます。

私はタイBLのニワカファンなので、他のカップルがどうなのか分からないけれど。もしかしてみんなこういう感じなのでしょうか?

 

◆「Still 2gether」(本放送2020/8~9)(Wikipedia

Bright・Winの「2gether the series」の続編。全5話。12月からWOWOWで放送予定。

1年後、Sarawat(演・Bright)は軽音部の部長、Tine(演・Win)はチア部の部長。お互いに部活が忙しくなって、なかなか会えなくなって。というようなお話。

美しすぎる2人を見ていると、とても気持ちが落ち着きます。やっぱりTineの泣くシーンが好き。

メイン以外のカップルもみんなかわいくて、見ていると多幸感に包まれます。

3話辺りでたくさん出てきたので、キットゥン(恋しい)というタイドラマファン必修ワードを、やっと耳が拾ってくれました。

P'Dimの家にあった精霊の祠。仏教的なものではなさそうに見えましたが、どっちだったんでしょう。

 

◆「Until We Meet Again」(本放送2019/11~2020/3)(Wikipedia

全17話と長め。主演はOhm・Fluke。

アジアドラマチックTVとかGyaoで有料放送されています。Gyaoは第1話無料。

P'Dean(演・Ohm)とPharm(演・Fluke)が、前世から赤い糸で結ばれているという設定。左手薬指の赤い糸って日本の伝説だったんですね。

最初から相手が決まっているのはちょっと物足りなかったんですが、P'Deanのおばあちゃんが出てきた辺りからすごく嵌まってしまいました。考えてみたら、長い時代を生き抜くってすごいことです。

前世が…という設定はファンタジックだけど、見終わってみると、最後までしっかり地に足の付いたお話。

P'Deanがどんどん優しくなっていくのが素敵でした。

Pharmは前世の記憶に泣かされる場面が多くて、でも、そういう現実離れした出来事が、見ていて全然不自然じゃなくて。脚本のバランスと役者さんの演技力なのかな。拍手。感服。

思い出していたら、もう一度見たくなってきました…。

タイBLドラマの感想

この1カ月でタイのドラマをたくさん観ました。ほとんどがBL(ボーイズラブ)です。タイのBLドラマは今年の春頃すごく流行っていたそうですね。流行に疎く当時は知らなかったのですが、最近になって、我が家でたまたま入会していた有料放送で観て、見事にはまってしまいました。

私はBLが結構好きです。特に「きのう何食べた?」は大好き。でも「おっさんずラブ」は何となく見逃しているし、どちらかというとライトなBLファンかなと思います。

タイのBLドラマがスゴイと思うのは、心理描写が丁寧でキャラクターの気持ちに入り込みやすいところ。特殊なものを対岸から観察しているというより、性別に関係なく共感できるラブロマンスに誘導されていくような感じです。しかも描かれているのは若者の恋愛だけではなくて、上下関係だったり、親子関係だったり、いろんな形の人間関係があってとても見応えがあります。

私はタイに行ったことがないし、タイの人もほとんど知らないし、どういう国か全然知らないで観たのですが、表面的な文化・言語の違いはあっても、何か深いところで似ているところがあるのかも…? と思ってしまうくらい、違和感なく観ていられます。1つには、タイも日本も高コンテクスト=行間を読むコミュニケーションスタイルなところが似ているそうですが、ドラマを観ていると、上下関係や集団行動、信仰に関しても似ているところがありそうだと思いました。タイの昔話というのはすごく特殊だと、以前ラジオ「昔話へのご招待」で聞いた気がするので、信仰やなんかの雰囲気も全然違うのかなと何となく思っていたのですが。

取りあえず日本で一番人気の「2gether the series」を見終わって一段落したので、これまでに観たものを記憶が新しいものから記録しておこうと思います。

 

◇「I'm Tee, Me Too」(2020/9~放送中)(Wikipedia

Krist・Singto、Off・Gun、Tay・NewというタイBL界の大人気カップル(※)3組の豪華な共演! 先月から放送中。非BLで、6人がそれぞれ恐怖症を持っているというユニークな設定。今のところ日本から公式を観られなくて、海外からは日本語字幕で公式を観られる状況です。来年1月からWOWOWで放送予定。

※タイのBL俳優さんはカップル売りが基本。

 

◆「2gether the series」(本放送2020/2~5)(Wikipedia

Bright・Winという超絶イケメン2人が主演の、日本で一番人気の作品。今まで観た中で一番、日本の学園ドラマに近いテイストだと思いました。私は重めの話が好きなので、最初のほうは少し物足りなかったのですが、終盤は、恋人ができたときの不安定さ、苦しさがリアルでとても良かったです。Winの慟哭が忘れられません。

松の木の精霊というのが出てきて、そのほこらが日本の神社の奥宮みたいでした。仏教だけじゃなくて、自然信仰もあるということでしょうか。

既にタイでは続編「Still 2gether」の放送が2020/8に終了していて、日本では年末にWOWOWで見られるようになるそうです。ずいぶん先ですが…

 

◆「Theory of Love」(本放送2019/6~8)(Wikipedia

Off・Gunという大人気カップルが主演。キュートな2人が主人公の、ポップで軽めの話かと思ったら、予想に反して重かった…。でもすごく好きな作品。Offが演じるKhaiの真摯な贖罪に心打たれました。

今は公式から日本語字幕で観られます。


[Eng Sub] ทฤษฎีจีบเธอ Theory of Love | EP.1 [1/4]

 

◇「Love Beyond Frontier」(本放送2019/5~8)(Wikipedia

男女4人でシェアハウス的な非BLですが、男性陣は超有名なBL出身の俳優さん(Krist・New)。ブロマンス的な展開もあっていろいろ楽しい作品です。とにかくNewの演じたキャラクターが格好良すぎて全体的に持っていかれた印象。

母親との関係性がテーマの1つかなと思います。お国柄もあるのでマザコンなんていう言い方は良くないのかもしれないけどそんなような要素もあります。個人的には冬彦さん以来の衝撃でした。ただし、冬彦さんは闇属性でしたが、こちらは圧倒的に光属性。

山の中腹にある神社で、願い事を凧に書いて吊すシーンがありました。日本の絵馬みたいなシステムがタイにもあるとは。

公式から日本語字幕で観られます。


[Eng Sub] อุบัติรักข้ามขอบฟ้า Love Beyond Frontier | EP.1 [1/5]

 

◆「彼は清明節に僕の隣のお墓参りにやってきた」(本放送2019/3~4)(Wikipedia

通称「とな墓」。幽霊が見える男子大学生(演・Ohm)と、幽霊(演・Singto)のBL。先に「The Shipper」を観てOhm君のファンになったので観たのですが、まさか人間と幽霊がくっついちゃう展開はないだろうと思ったら…。でも、2人の気持ちの入った演技がとても良かったです。幽霊の真実が明らかになる場面の迫力に痺れました。

"タイの中国系のお墓"が、気のせいか沖縄のお墓に似ていて不思議でした。

 

◆「The Shipper」(本放送2020/5~8)(Wikipedia

腐女子が主人公の入れ替わりもの。最初はコメディータッチなのに、回を追うごとにシリアスになって、出会いや別れ、家族関係など、人生のいろんなことを考えさせてくれる作品です。BL的要素もありますが、性別が入れ替わるのであまりそれっぽく感じませんでした。主人公の友達を演じているOhm君という俳優さんが好き。

こちらも公式から日本語字幕で観られます。


[Eng Sub] The Shipper จิ้นนายกลายเป็นฉัน | EP.1 [1/4]

 

◆「TharnType The Series」(本放送2019/10~2020/1)★対象18歳以上(Wikipedia

Mew・Gulfという、イベントで結婚式を挙げたことで有名な大人気カップルが主演。18禁ということは分かっていましたが、18歳なんて遙か大昔なので気にせず観たら、不整脈を起こしそうになりました。

そういう刺激はあるものの、ストーリー的には竹宮恵子さんとか萩尾望都さんを思い出させる感じもあって、個人的には、あ、これは古典BLの流れなんだなという感想です。映像化されて感無量。

Gulf君の演じるTypeというキャラクターが少々アンバランスで、大学生なのに子供みたいな幼稚なイタズラをするのですが、それは、もしかしたら彼の中の、成長が止まってしまった部分を表現しているのかも…と思いました。考え過ぎかもしれませんが、欠落をテーマにした作品なのかなと思っています。

嬉しいことにもうすぐ続編が放送される模様。日本で見られるかは分かりませんが。

 

◆「Love By Chance」(本放送2018/8~11)(Wikipedia

主演Perth・Saint、他にMean・Plan他2組のサブカップルの純愛もの。舞台はやっぱり大学で、「TharnType」とつながりのある作品世界。こちらは18禁なのかどうかよく分からなかったんですが、結構それっぽい描写は多めかと。

本作は役者さんの見た目が個性的で、Perth、Planはすごく少年っぽくて、Saintは女子顔負けの可憐さ。Meanは韓流アイドルみたい。そういう面々のあれこれは、こんなの見ていいのかな…という気もしないでもなかったけど、まあ見ちゃったんだけど。

Plan君演じるCanが、嫌いなアイツを呪ってやる!って、庭で何か怪しげなものを燃やすシーンが面白かったです。

「A Chance to Love」というMean・Plan主演の続編が放送中。どうやって観ればいいのか分からないので静観中です。

 

◆「SOTUS S the series」(本放送2017/12~2018/3)(Wikipedia

言わずと知れたタイBL界のレジェンド、Singto・Kristが主演の作品。金字塔といわれる「SOTUS」の続編です。前作の2年後という設定で、2人のオフィスラブがメインに描かれています。

前作冒頭であんなに怖かったアーティット先輩(演・Krist)は、髪型が変わって可愛さが倍増し、立場的にも新入社員で大人しめのキャラクターになるので、こちらのほうが好きという方も多いみたい。

私は「SOTUS」のほうがどちらかというと好きなんだけど、前作ではあまり見られなかった2人の甘々なところをたっぷり見られる続編にも魂を持って行かれました。

それに、ドラマで描かれていたタイのオフィスが、日本のオフィスとあまりにも似ていてビックリ。新製品のアイデアコンテストがあったり、会議や給湯室、慰労会など。ビーチでスイカ割りまであって。スイカ割りの分布っていったいどうなっているんでしょう。

公式から日本語字幕で見られます。ただ、KristSingto Japan FCさんの訳とは少し違うところがあるみたいでした。


[Eng Sub] Sotus S The Series | EP.1 [1/4]

 

◆「SOTUS the series」(本放送2016/8~2017/1)(Wikipedia

言わずと知れたタイBLの金字塔。主演はSingto・Krist。最初に観た、今でも一番好きな作品です。

少年誌から抜け出してきたようなビジュアルの2人が、まるで、"囚人・看守ゲーム"の双方の代表みたいにやり合うところは、好き嫌いが非常に分かれるシーンですが、私は大好き。後半、アーティット先輩(演・Krist)が後輩のKongpob(演・Singto)のアプローチに戸惑って2人がすれ違うところも好きです。でも、もちろんそんなのばかりではなく、ちゃんと甘い場面もあります。タイでは甘い飲み物を飲みながら辛い食べ物を食べるそうですね。まさにそんな感じ。

公式から日本語字幕で見られます。ぜひぜひ。


[Eng Sub] SOTUS The Series พี่ว้ากตัวร้ายกับนายปีหนึ่ง | EP.1 [1/4]

舌切り雀のこと(3)

昔話「舌切り雀」は、宇治拾遺物語採録されている「腰折れ雀」をルーツに持つのではないかとよくいわれるようですが、それ以外に、雀=若い女性説や、雀=桃太郎的英雄説があることを1つ前の記事で書きました。

後の2つについて考えてみると、いずれもお話で語られていない舌切り雀の特殊な属性を明らかにしようとするものです。舌を切られた時点で十分特別とも考えられますが、やはり、肝心の切られる理由に物足りなさを感じる人も結構いるのかなと思います。

でも、理不尽とも思えるような理由で痛い目に遭っているからこそ、かえって人気があるのかもしれないなぁとも思いました。

舌切り雀のこと(2)

「舌切り雀」を久しぶりにラジオ「昔話へのご招待」(2020.8.16)で聞いて、何だか不思議なお話だなぁと思いました。率直に言えば、何となく辻褄が合っていないような気がして。ちょっとしたこと(?)で一緒に暮らしていた雀の舌を切るとか、探しに出たお爺さんにとんでもない試練が課されるとか、人間にひどい目にあわされた雀が財宝をくれるとか。いくら昔話は極端が好きといっても極端過ぎるような気がするし、このお話が5大昔話に入っているのはどういうわけかしら……とも思いました。

それでいろいろ検索などしていたところ、前回も書きましたが、雀=若い女性という解釈があるそうです。なるほど、そうであれば筋が通るような。この説は作家の松谷みよ子さんなどが主張されているのだとか。

他には次のような解釈もあります。柳田国男さんの「桃太郎の誕生」に書かれているのですが、それによれば、舌切り雀は、もともとは「桃太郎」「一寸法師」などのように、神の子が人間のもとにやってきて鬼退治をするようなお話だったのが、時代とともに変化して今のような形になったということです。ちょっとビックリするような説ですが、その根拠として、「尾っぱ切り雀」、「雀の仇討ち」など多数を挙げています。

舌切り雀のルーツは、13世紀鎌倉時代宇治拾遺物語に載っている「腰折れ雀」が広く知られていて、上の柳田氏の説はそれに比べると少数派のようですが、とてもロマンがあって魅力的だと思いました。

尾っぱ切り雀は、お婆さんが川上から流れてきた雀を拾って大事に育てていたけれど、糊をなめてしまったのでお爺さんが尾羽を切って追い出してしまって、あとは舌切り雀と同じ話。川上から流れてきたのが桃太郎的というわけです。

雀の仇討ちは、山姥が雀の卵と親雀を食べてしまって、一羽だけ助かった子雀が仲間と仇討ちをする話。仇討ちの部分は猿蟹合戦の後半とよく似たお話です。卵から生まれた小さな子が、仇討ちという英雄的行為を成し遂げるところが桃太郎的と考えられるそうです。

また、舌切り雀や尾っぱ切り雀で、雀がひどい目にあわされる理由も考察されていて、舌切り雀が桃太郎的なお話であるとすれば、桃太郎に黍団子が付随しているように、雀に糊が付随していて、そこから変化していったのだろうということです。

確かに(?)、雀の仇討ちでは、子雀が米の団子をこしらえて仲間を募る場面があります。これが、糊を食べてお仕置きされるように変化したとすれば相当大きな変化のような気もしますが、逆に考えると、そんな変化が起きるほど、元は古いお話だったのかもしれません。

雀の仇討ちに関しては、最近、これを海外(北東アジア、東南アジア、シベリア、アメリカ北西岸インディアン)の類話と比較して、この昔話のテーマは"悪天候からの回復"だとする説があるようです。面白かったのは、紹介されている類話の中に、ミャンマーで語られていたという、桃太郎に似たお話があったこと(出典)。

ラジオ「昔話へのご招待」でも、桃太郎や猿蟹合戦の類話はいろいろ紹介されていて、桃太郎のバリエーションの中に、猿蟹合戦の後半によく似たものがあるというのは聞いたことがあります。それから、猿蟹合戦の類話として挙げられたグリム童話の「コルベスさん」については、どういうわけでコルベスさんがひどい目にあうのかお話の中で語られないので、グリム自身も大変興味を持っていたようだという小澤先生の解説が印象的でした。私も聞いていて不思議だなぁと思っていたのですが、こんな難しい謎を説明するような研究もあるのですね。ちょっと感動してしまいました。

舌切り雀のこと(1)

先週のラジオ「昔話へのご招待」では、「舌切り雀」が紹介されました。久々に聞いてみると、何だか不思議な話のように思いました。

お婆さんが、(理由があったとはいえ)雀の舌をいきなり切ってしまうのはちょっとビックリだし、雀の居所を探すのに、お爺さんが肥を飲むっていうのは過酷すぎるような気がするし、雀は人間に舌を切られたのに、お土産をくれるんだなぁ……なんて、いろいろ考えてしまいました。

インターネットで検索してみると、"雀=お爺さんの愛人説"というのがあって、そうだとすれば少し納得できるような気もしました。

もっといろいろ調べてみると、舌切り雀は、「宇治拾遺物語」(13世紀、鎌倉時代)の「腰折れ雀」が基になっているという説が、かなり広く信じられているようで、kotobankにも記載されていましたし、国会図書館のデジタルコレクションにも見つかりました。

でも、腰折れ雀と舌切り雀は、同じ雀が出てくるにしてもだいぶ違います。腰折れ雀はけがをしていた雀を助けたら恩返しをしてくれたという話で、雀の舌を切るわけではないし、雀を探しに出てとんでもない試練を課されるわけでもありません。

そんなことを考える人は結構いるようで、舌切り雀は腰折れ雀とは別の系統の話だろうとか、腰折れ雀の影響を受けていたとしても、別の要素もあるだろうという説が散見されます。

その代表的なものに、柳田国男氏の「桃太郎の誕生」があります。同書では、青森県津軽で採取された「尾っぱ剪雀」が舌切り雀のより古い形であるとしています。驚いたことに、このお話では、糊を食べた雀の頭を"擂木で"打って、"尾羽を剪って追出した"のは、お婆さんではなくお爺さんで、"臼彫りと菅刈りに"道を尋ねて雀を探すのがお婆さんです。となると、愛人説も否定されてしまいます。お話の冒頭で、お婆さんが、"綺麗な娘子を一人拾ってきた"と言うのにもかかわらず。

別の例は、国会図書館のデジタルコレクションにあった志田義秀著「日本の伝説と童話」(1941)。腰折れ雀と舌切り雀の中間的なお話として、鎌倉後期の「風葉和歌集」の中の「雀の物語」、後柏原院勾当内侍作と伝える「雀の発心」、同じく 勾当内侍作と伝える「雀の松原」を挙げています。が、私にはこれらも雀が出てくる以外どういう共通点があるのかよく分かりませんでした。

前述の「桃太郎の誕生」によれば、舌切り雀は外国人に珍しがられたそうですが、さもありなんと思うような不思議なお話の、ルーツはいまだ諸説ありのようです。

ところで、国会図書館のデジタルコレクションを見ていたら、腰折れ雀と舌切り雀が混ざったようなお話もありました。「白鳥町史」(1985)という香川県の郷土誌で紹介されている「雀の恩返し」という口承文芸で、だいたい次のような内容です。

ある朝雀がうるさく鳴くので見ると、雀がヒサゴの種を持ってきてくれた。それを蒔いてなったヒョウタンを、お婆さんが、舌切り雀のところに持っていった。糊をなめたので舌を切られて飛ばされて淋しかった雀に同情したお爺さんが、何かつけて治してやって飛ばせた。すると、舌切り雀は治してもらって嬉しかったんだろう、ヒサゴの種を持ってきてくれて、それを蒔いたらヒョウタンができて、中からいいものがたくさん出てきた。……

舌切り雀の恩返しに、"治してやった"というはっきりとした理由がついているのが興味深いですし、ヒサゴの種が2回出てくるのもとても面白いです。もともとあった腰折れ雀のお話の中に、舌切り雀が友情出演したような感じで、何となく、やはり両者は別物ではないかという感じがしました。

桃太郎のこと

ラジオ「昔話へのご招待」で、かなり前に「桃太郎」が取りあげられたことがあります。桃太郎の解釈の歴史や、外国の昔話との比較など、とても面白くて、特に印象に残っています。

この中で、柳田国男さんの「桃太郎の誕生」についても触れられていました。その部分の小澤先生の解説を引用します。

柳田先生、こういうふうに言ってらっしゃるんですね。

桃太郎のあの桃は、川上から流れてきたと。で、日本の川の川上って、みんな山であると。山から流れてきてる。山から流れてくるっていうのは日本独特なんですけど。

(中略)

すると、その山の上っていうのは、日本の信仰では神様がいる場所であると。天孫降臨っていいますからね。山の上に神様降りてきたと。

だもんで、その山の上から流れてきた桃。そこに、中にいた子供は神の子であると、神から授けられた子であると、こういうお考えだったんですね。

 (ラジオ「小澤俊夫 昔話へのご招待」2011/10/21放送より)

最近ふと思い出したのですが、山に神様がいて、川を伝って人里に下りてくるという考え方は、「アマテラスの誕生」という本に紹介されていた、日本の古い信仰だったような…。同書の著者は、神主でもある筑紫申真さんという方です。

「桃太郎の誕生」は、そういう知識(常識?)を前提に書かれた論文だったのでしょうか。

小澤先生は、桃太郎の桃は、神聖な山の上から神の子を乗せてきたというよりは、中国の道教で不老長寿の果物として神聖視されていた桃が日本に入ってきたというお考えのようです。桃太郎のバリエーションで、おばあさんが桃を食べたら若返って桃太郎が生まれたという話もあるそうなので、確かにそのほうが話が合います。同時に、そもそもなぜ桃なのか?という疑問も解決されます。

でも、そうなると、今度は、なぜ桃が川を流れてくるパターンが生まれたのか?という疑問が出てきます。やっぱり、柳田説が当たっているところもあるのかも……と思いました。

桃太郎の誕生 (角川ソフィア文庫)

桃太郎の誕生 (角川ソフィア文庫)

  • 作者:柳田 国男
  • 発売日: 2013/08/24
  • メディア: 文庫
 
アマテラスの誕生 (講談社学術文庫)

アマテラスの誕生 (講談社学術文庫)

  • 作者:筑紫 申真
  • 発売日: 2002/05/10
  • メディア: 文庫
 

妖怪の効能

今年2020年はアマビエという妖怪が話題ですが、「くだん(件)」という妖怪も、かつてアマビエとよく似た厄除けの効能で有名になったと知り驚きました(Wikipedia)。似たような妖怪が複数いるのはなぜなのでしょう?

「件」は、厄除けばかりでなく、災害を予言することでも知られているそうです。災害の予言といえば、津波を予言するキャラクターが現れる昔話をラジオ「昔話へのご招待」で聞いたような気がします。

 

……飛躍しますが、もしかすると、厄除けや予言をするキャラクターは、災害を語ることに対するタブー感を乗り越えるためのシステムなのかもしれない……なんて、何となく思いました。話題にしづらいことでも、話せたほうが、個人としても気が楽だし、集団の歴史としても記憶されやすくなると思います。

最近では、東日本大震災で食物汚染が話題になった直後、何だか疲れたような顔のキノコのキャラクターが大流行しました。あれは厄除けではなかったけれど、もしかするとそういう類いだったのかも……? 勘違いかもしれませんが、そんな気もします。

 

そう考えると、太平洋戦争の空襲の記憶を負っているらしい「件」の目撃談が、西日本に集中しているのはなぜなのでしょう。空襲は日本全国にあったのに。何か風土の違いがあったのでしょうか? 謎です。

「蘇我氏 古代豪族の興亡」

蘇我氏 古代豪族の興亡」という本をときどき読み返しています。

蘇我氏 ― 古代豪族の興亡 (中公新書)

蘇我氏 ― 古代豪族の興亡 (中公新書)

  • 作者:倉本 一宏
  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: 新書
 

蘇我氏は、歴史を習い始めて最初に出てきた"悪役"なので、とても印象深いです。

他の歴史上人物では、例えば足利尊氏など、戦後になって名誉回復(?)した人もいます。そう思うと、蘇我氏が何だか気の毒のような気がします。

蘇我入鹿は大悪人で、聖徳太子は聖人というのは、でも、本当なのでしょうか。

何だかいろんなことを考えさせられる一冊です。

本書の中では古代の天皇が「和風諡号」で呼ばれていて、大変興味深いものでした。例えば推古天皇は「とよみけかしきやひめ」です。

推古天皇といえば、その時代の中国の記録では、日本の王は女王ではなく男王とされていて、これは聖徳太子のことだろうとあっさり書かれているのも気になります。もしかして、聖徳太子が大王で推古天皇が摂政だったんじゃない?なんて、つい想像をたくましくしてしまいました。

「日本の民俗宗教」

松尾恒一さんの「日本の民俗宗教」を読みました。

日本の民俗宗教 (ちくま新書)

日本の民俗宗教 (ちくま新書)

 

難しかったけど、今まで知らなかったことが分かって面白かったです。

例えば、旧正月立春の違い。ふわっと、だいたい同じ?と思っていたけれど、旧正月太陰暦立春太陽暦に基づいていて、必ずしも一致せず、年によって前後することもあったのだとか。

旧正月の前日が大晦日立春の前日が節分。年と季節の変わり目で、良いものと、悪いものが両方来る時期なので、邪悪なものを追い出すために、旧正月の大晦日には宮中で追儺という節分みたいな行事を行っていたそうです。大晦日・お正月と節分・立春は別物と思っていたけど、以前はもっと近いもので、どちらもすごく重要なイベントだったのかなと思いました。

そう思うと、中国では今でも春節が一大イベントというのが以前より腑に落ちます。

日本の昔話では、年の変わり目に火を絶やさないようにするとか、死体が小判に変わるというのがありますが、悪いものといいものが両方来ることと関係があるのかなと思いました。

それから気になったのは、中国では新年の最初の満月に丸い餅や団子を食べるのだとか。お月見みたいです。日本の鏡餅やお雑煮の丸餅にも、元はそういう意味があったのかどうか…。この本の中では日本のお正月は稲の祭りだと述べられていて、月の暦そのものとの関わりについては言及されていないようでしたが、いろいろなことが想像され興味深かったです。

本書の何に一番感動したかというと、一つ一つのお祭りや風習の由来について、明快な解説がついていること。

例えば祇園祭は…

1.平安時代初期、人口増加・インフラ不足が原因で町の衛生状態が悪化し、疫病が流行したのを、御霊(たたり神)のせいと考えるようになり、それを宥めるための「御霊会」を行うようになった。

2.御霊信仰とともに、疫鬼を退治する「牛頭天王」への信仰が広がり、牛頭天皇を祀る祇園社(八坂神社)による祇園御霊会(祇園祭)が行われるようになった。

 

「御霊」とか「牛頭天王」という言葉は、聞いたことはあっても、何か難しそう…と思っていました。でも、この説明は分かりやすかったです。

日本のお祭りで、御神輿をかついで海に入るのを私もテレビで見たことがありますが、それは上の1で行われた御霊会と同じ流れなのだそうです。海に入るのは御神輿に乗っている疫病神を海(異界)に流すという意味があるのだとか。

今まで謎だなぁ…と思っていたあれこれの、理由が分かって嬉しくなりました。

 

お雑煮のこと

関西風の、白味噌西京味噌)のお雑煮を最近初めて食べました。

甘いのでびっくりしました。

味噌味と言っても、塩分が少なくて、普段の味噌汁とは全然違います。

もはやスイーツに近いような感じがするくらい。

 

それでふと疑問に思ったのは、西京味噌は今はスーパーに行けば簡単に手に入りますが、一昔前、多くの人が家で味噌造りをしていた頃はどうしていたのでしょうか? 

やっぱり店があって買っていたのでしょうか。

それとも、家で甘い味噌もつくっていたのでしょうか。

あるいは、家でつくった塩分の多い味噌を使っていたのでしょうか?

お雑煮のことが書いてある本を見ると、関西地方はたいてい「白味噌仕立て」と書かれていますが、この「白味噌」は全部が昔から今のような甘い味噌なのかどうか……。

なぜかそんなことが気になってしまったお正月でした。