「河童」
ふと思い出して再読しました。
「ガリヴァー旅行記」のような風刺小説ということですが、私には、"風刺"という言葉がもつ対象との距離感があまり感じられませんでした。それよりも、作者にとっての現実がそのまま描かれているように感じました。
動物は、自分が生き残るためなら、他にはいくらでも残酷になれる一面があると思います。平時は意識しなくても、たとえば社会的な立場が弱くなった時、戦争になった時などには、人間の残酷性に直面せざるを得なくなり、それが覆い隠されている社会に矛盾を感じてしまうと思います。そして、そのような隠された危険から身を守ろうとし過ぎると、神経が疲弊してしまうのだと思いました。
ところで、本作の副題は何を示しているのでしょう。単に登場する河童達の名前と関連しているだけでしょうか?
あるいは、"河童"の別の読み方に作者の嫌悪感を生じさせるような何かがあったのでしょうか。
- 作者: 芥川龍之介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1968/12/15
- メディア: 文庫
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