山裾の闇
小豆島で農家を営む老夫婦が、息子夫婦と同居するために、故郷を引き払って東京に移住する短編小説です。
農家の厳しい生活と、夫婦のシビアな現実感覚がとても印象的でした。
私の家も元々は田舎のお百姓さんだったからか、読んでいると、実家に戻ったような気持ちになりました。
実際に昔ながらの農家で生活した経験はありませんが、子供時代に親戚の集まりで何泊か泊まったことはあります。
当時の情景で忘れられないのが、夜の闇の中で見た真っ黒な山です。
山から、黒い静寂が押し寄せてきて、何か居るというより、何かが満遍なく溶け込んでいて、自分もその中に吸い込まれそうな気がしました。こういうところに住んでいたら、物事が全然違って見えるのかな…と、子供心に感じました。